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中学校の英語教科書にはちょっと変わったフォントが使われている。
欧文フォントにはセリフ(ひげ)のあるものとセリフのないもの(サンセリフ)がある。中学1年生用の教科書には,サンセリフのものを使うのが常識とされている。というのは,生徒は教科書の文字をまねて書く。手書き文字と活字体の区別がついていない最初の段階では,小文字の a の形が手書き文字と活字体で異なることを知らず,教科書に載っている形をそのままなぞってしまう。それを避けるために,教科書ではサンセリフのものを載せるようにしている。教科書会社の配慮である。
ところが,サンセリフで統一しているかというとそうではない。通常はこの2つを同一の文の中で混在させることはありえないのだが,大文字の I という難関が立ちはだかっている。なぜか大文字の I はひげを付けなければならないことになっているのだ。小文字の L と区別がつくようにという理由で。したがって教科書では,大文字の I だけ特別にセリフを付けることにしている。
a の形はともかくとして,I についてはセリフを付けさせるのはおかしい。文頭なら I と L は明らかに形が違うし,小文字の L が1文字で独立した語として現れることはありえないし,語中で I の大文字が出てくるはずもない。間違えて困るのは I で始まる固有名詞(Iowa とか)だが,これも混同の可能性があるのは I の後ろに母音字が続く場合だけであって,中学生レベルではほとんど出てこない。英語話者なら,手書き楷書体(いわゆるブロック体)の場合,小文字の l も大文字の I も縦棒1本で区別しないはず(いわゆる筆記体,漢字の草書体に相当する書き文字の場合は明らかに異なるが)で,あえて日本人向けの特殊なルールを作る必要もないと思う。ところが中学校の英語の先生の中にはバカもいて,「ひげがなくて l と区別がつかないから減点」なんて指導をする輩がいるらしいのは嘆かわしいことだ。
ところが,CDジャケットのタイポグラフィに,上記のようなわが持論に真っ向から反するものがあった。澤野工房から出した "Fluide" (Baptiste Trotignon Trio) である。フランス人の盤なのに,見事なまでに大文字の I にひげが付いている。違和感ありまくりなんだが,Artwork from a design by Lili K. と書いてある。これでは Lili K. という人がデザインしたのかどうかよくわからないし,その人が日本人であるかどうかもわからないのだが,日本人であってほしい。
さらに調べると,澤野工房が出す以前に,naive というレーベルから出ていたらしく,そのアートワークを見ると,I にひげは付いていない。やはり日本人が余計なことをしたもののようだ。
でも,このウェブログの書体も基本的にサンセリフなんだけど,I にはひげが付いているなあ。ということは「サンセリフの I にひげを付けるのはおかしい」というのは単なる思い込みだったのか。
補足:SansSerif
6/2段落の順序を入れ替えた。 |