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コーネル・ウールリッチの生涯

サスペンス小説家,コーネル・ウールリッチ Cornell Woolrich(別名ウィリアム・アイリッシュ William Irish など)の評伝。著者は「サスペンス」ではなく「ノワール」という言葉を多用している。

この人の生涯そのものは,同性愛者で結婚がすぐに破綻したとか,母親とずっと一緒にホテル住まいだったとかいう事実をのぞけば特に変わったエピソードがあるわけではない。上下2巻をかけて書いているのは,詳細な解題。それから映画やテレビドラマ・ラジオドラマへの翻案作品の紹介。ほぼこれに尽きる。でもパルプマガジンに書き飛ばした作品を一つ一つ追って,作者自身がつけた仮題から始まって作品の変遷(一つのアイデアをいろんな作品に変容させていくわけだ)をたどっていくのは気が遠くなるような作業だ。

とにかく,そうした作業を全部日本語に移し,索引・ウールリッチ著作リスト・参考文献表を完璧に備え,さらに映画やテレビドラマの詳細など日本独自の調査資料も増補するというこの企画が実際に商品として流通しているという事実がすばらしい。原著が出てからかなり時間が経っているが,その間に新たに出版された刊行物や映像作品などについても訳者あとがきで補ってある。

帯にはジェイムズ・エルロイらの推薦の言葉が載っているが,まあマニア以外は触手を動かされない書籍ではあろう。でもミステリファンなら,一家に1冊(もとい,上下で2冊)置いておきたい本である。図書館で借りたりして申し訳ない。


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